第8回文学フリマの<ジャイアントフィールド・ジャイアントマップ・ウォークラリー>に協賛いただいた、
日本ジュールヴェルヌ研究会の会誌、「EXCELSIOR!」の第3号です。

私は1号から持っているのですが、今回の文学フリマで手に入れた3号の充実ぶりは、これまで以上に素晴らしい、というわけでご紹介します。
特集は「十五少年漂流記」の名でよく知られている「二年間の休暇」ですが、なにより面白いのが読書会のコーナーです。
読書会を起こした記事というのは対象がなんであってもぱっとしないことが多いのですが、この本は違います。参加者による「二年間の休暇」への感想だけでなく、ヴェルヌの草稿を調べると何がわかるか、編集者がどのように作品の成立に関与しているか、また日本で「十五少年漂流記」としてあれほど親しまれ、また何度も日本アニメの元ネタになっている理由はなにか、ヴェルヌの政治的な思想をどの程度反映しているか、「こども」に関するヴェルヌの書き方はどうか、その他の作品と比較してどうか、などなど、おもしろくて深い討論が満載です。
「二年間の休暇」はこどもの読み物としては非常に長いので、抄訳の「十五少年漂流記」として読んだことがあるだけ、という方も多いかと思いますが(かくいう私もそうです)またあまりにも昔に読んで覚えていない方や、一度も読んだことがなくてむしろこの翻案的なアニメ「銀河漂流バイファム」とか、私は見たことないけど「コードギアス」しか知らない、という方にも、この読書会はたいへんおもしろく読める、に違いないと思います。
キャラクター成立過程についての草稿を基にした推理など、学術的な論文になるとなかなか読めないに違いないのですが、読書会では参加者がみな、ざっくばらんなんだけれども節度のある語り方をしていて、素晴らしいメンバーを集めていると感じさせられました。
その他、小特集「グラント船長の子供たち」をめぐっての記事や、ヴェルヌ作品は映像化が多いだけにそれをめぐる考察の数々など、非常に読み応えのある1冊となっています。
ところで、私にとってヴェルヌはSFというよりも、「小公女」や「ロビンソンクルーソー」や「赤毛のアン」や「トム・ソーヤー」のような、子供のころ胸おどらせて読みふけった翻訳文学のひとつとして好きなものです。また日本人ならヴェルヌの影を小説や、映画や、アニメや、マンガのどこかできっと見たことがあるにちがいないと思う、そういう存在です。
このような作家をこういった形でとりあげられる研究会が日本にあるということに、喜びと希望を感じます。
というわけで次号を楽しみにしています。
(KONO)
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